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分析心理学「ユング」のコンプレックスから導き出される人の本質

前回ご紹介した精神分析学の創始者ジークムント・フロイトの弟子にして親友であったのがスイスの心理学者カール・グスタフ・ユングです。

彼は1875年に生まれていますので、フロイトよりも19歳ほど若いことになります。

ユングが38歳になるまで交遊関係が続き、1913年に二人で列車旅行に行った際に、ひとつの夢を分析し、口論になって仲が破局したといわれています。

二人には共通点も多くありますが、まったく共有できない点もあったということです。

ユングの提唱した分析心理学は、深層心理学や心理療法理論などに発展していきます。
「ユング心理学」とも一般的には呼ばれています。

今回はこのユング心理学について触れていきたいと思います。

■無意識の世界

前回のフロイトの話の中でも無意識については触れてきました。
個人の、意識することが苦痛であるような欲望を抑圧している場所が無意識の世界です。

フロイトに関する記事についてはコチラをご覧ください。
⇒ 精神分析学者「フロイト」の無意識の中に本当の自分がいるということについて

そしてこの無意識の世界と意識の世界は「夢」の中でつながっています。
押さえつけ過ぎた欲望はやがて神経症となって現れてくることもお話しました。

ユングもこの点においては共通の認識です。

ではユングとフロイトの異なる点はどこなのでしょうか。

実はこの無意識の世界観が異なるのです。

ユングはもともとブロイアーが提唱した「コンプレックス」について研究をしていました。
コンプレックスは私たちも日常会話に使用する単語です。

定義としては、ある事項と直接関係のない感情が結合された状態をいいます。
例とあげると、有名なコンプレックスにこのようなものがあります。

○マザコン(マザーコンプレックス)
子どもが母親に抱く愛着です
必要以上に母親の干渉を求める大人もいます。

これは母親に対し、依存したいという母親の存在とは関係のない感情も強く持っているケースです。
なぜそうなったのかという原因は人それぞれ違います。

他にもたくさんのコンプレックスがありますので、少しご紹介すると、

○エディプスコンプレックス
これは息子の父親に対する対抗心です。
ギリシア悲劇のひとつで、オイディプスが父親を殺し母親と結婚したという近親相姦の物語です。
フロイトが提示した概念で、ユングは一部を否定しています。

○ダイアナコンプレックス
男性に負けたくないという女性心理です。

○シンデレラコンプレックス
高い男性志向をもつ女性心理です。

○ピグマリオンコンプレックス
人形に対する愛着です。

このように無数にコンプレックスがあります。
時代を追うごとにその数は増えていっています。

ただし、ユングたちの考えるコンプレックスは「心的複合体」であるのに対し、現代では少しニュアンスを変えてアドラー理論という「劣等複合体」としてコンプレックスをとらえている傾向にあります。
「白人コンプレックス」などはまさのその通りではないでしょうか。

ユングはこのコンプレックスの現象を研究していく中で、無意識にはフロイトの示した無意識よりも更に深い無意識の領域があることに気が付きました。

自我のありようとは独立した性格をもつ普遍的なコンプレックスがあるという考えです。

それは個人を超越した人類(集団や民族)の心に普遍的に存在する無意識です。

ユングはこれを「集合的無意識」と呼びました。

 

■連想実験

集合的無意識の話をする前に、ユングの興味深い実験があります。

「連想実験」というもので、ごく簡単な単語を伝え、被験者はそこから連想します。
2回同じ内容を繰り返します。

連想の内容はさておき、応答にかかる時間、平均的な応答時間との差から、特殊な応答を見つけ出すというものです。

そしてそのような特殊な応答を反応させる単語を「刺激語」と呼びました。
そしてその刺激語が無意識に抑圧されている感情を表していることを見出しました。

ユングはこの特殊な応答と無意識のコンプレックスを結び付けています。