漫画の名シーンから学ぶと題しまして、今回はファンタジー漫画の金字塔を打ち立てた、「ベルセルク」をご紹介いたします。
時は戦国時代(ヨーロッパのような世界観です)。
主人公の「ガッツ」は少年時代を傭兵として戦場で過ごし、やがて傭兵部隊「鷹の団」に入ります。
そして鷹の団を離れたガッツの前に続々と現れる魔獣や妖精たち。
新しい仲間との冒険の旅が始まります。
(現在は37卷まで出版されています。現在も継続連載中です)
※以下ネタバレを含む内容も含まれています。
■重厚なストーリー
まず、このベルセルクの何が凄いかといいますと、主人公「ガッツ」の過酷な運命です。
私も数々の小説や映画、漫画などを通じて物語を読んできましたが、このガッツの運命はそれらを遥かに凌駕しています。
処刑された母親の躯より産まれ落ちたガッツは、傭兵団に拾われますが、そこでトラウマになるような思いをし、養ってくれていた義父(冷酷な傭兵団のボス)を殺して逃げるのです。
そこからは幾多の戦場を金のため、生きるために駆けまわる日々です。
やがて鷹の団という傭兵団に出会い、団長「グリフィス」という同世代の男に一騎打ちで敗れて入隊することとなります。
鷹の団の中で、めきめきと力を付け、周囲からも信頼されるようになり「斬り込み隊長」に抜擢されます。
ついに鷹の団は敵国の無敵の要塞を陥落させ、正規軍として迎えられるのですが、肝心のガッツが脱退を決意。
グリフィスを破り、独りの生活を送ることになります。
しかしグリフィスはただ独りの親友を失い、失意のどん底へ。
破滅の道を進み、鷹の団は自国に抹殺されるのです。
囚われたグリフィスを救い出すため生き残った団員とガッツは協力します。
しかし、救出したグリフィスは舌を抜かれ、全身の皮を剥がされ、健を切られた状態でした。
そんなグリフィスは魔法の宝玉(ベヘリット)から悪魔のような力をもつものたちを召喚し、仲間の命と引き換えに自らの復活を果たします。
その時の生き残りがガッツです。
司徒と呼ばれる魔性のものたちの群れによって仲間を失い、片目を失い、右手を失う。
それでもガッツは戦ってその場を斬り抜けます。
その後も、生贄に捧げられるはずだったガッツには魔性のものたちが絶えず襲い掛かってくるのでした。
ガッツはグリフィスへの復讐というどす黒い殺意だけを胸に戦い続けます。
■過酷な運命に対しても立ち向かい続ける
グリフィスを追う旅の中で、親から虐待を受けている少女に出会います。
また同じく親からの虐待を受けて宝玉の力で親の命と引き換えに妖精の女王となった魔物とも戦います。
瀕死の重傷を受けながら勝利し、別れ際に少女に言った言葉、ここが名シーンです。(16卷)
「逃げ出した先に楽園なんてありゃしねえのさ。辿り着いた先、そこにあるのは、やっぱり戦場だけだ」
だからこそ、今、この場でお前も戦えとガッツは言い残して消えます。
この言葉は私が社会人として働いている中で、キツイ思いをしたり、逃げたくなったときに必ず思い出します。
逃げても何も変わらない。
次の戦場が待っているだけ。
だったらここでまだ戦い続けよう。
そう思って励むようにしています。
■ライバルを通じて生まれた目標
ただやみくもに、生きるためだけに戦い続けるガッツの目を覚まさせたグリフィスの言葉があります。
ここが名シーンです。(6卷)国の姫とグリフィスの会話です。
男は何のために戦い続けるのかを問う姫にグリフィスが答えます。
「貴い物?家族とか、恋人とか?」
「そういう人もいますね。でも男ならその二つを手にする前にもう一つの貴いものに恐らく出会っているはずです。誰のためでもない、自分が、自分自身のために成す、夢です。」
(略)
「私にとって友とは決して人の夢にすがったりはしない、誰にも強いられることなく、自分の生きる理由は自らが定め進んでいく者……(略)……私にとって友とは、そんな対等な者だと思っています。」
この話をたまたま聞いてしまい打ちのめされるガッツ。
ここからガッツは少しずつ変わっていきます。
グリフィスに近づけるように。
友として認められるように、ガッツも自分の道を見つけ出すのです。
社会という戦場で戦い続けるサラリーマンにも、本当に自分を覚醒させてくれる友人に出会えるかもしれません。
私もグリフィスのようにありたいですし、ガッツのようにもありたいと思います。
夢のために互いにぶつかり合い、高め合う二人が羨ましくもありました。
最後に
ベルセルクとは、北欧神話に登場する異能を持った戦士たちのことを指します。
ベルセルク(berserkr)とはノルウェー語やアイスランド語で、英語ではバーサーカー(berserker)といいます。
また、日本語では「狂戦士」と表現されます。
伝承の一つで”我を忘れて怒り狂う”という表現がありそれが語源となっている説がある。
バーサーカーや狂戦士は、多くの物語やゲームのキャラクターや職業に採用されるなど、聞いたことがある方も多いはずです。
まさに「熱い男」を描いたような内容で、現代を生きる情熱的な人と照らし合わせて考えさせられるような面白さがある。
そしてなにより、どんな困難な状況下におかれても「決して逃げない姿勢」がとてもカッコいいです。